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〈特別上映〉オタール・イオセリアーニ映画祭〜ジョージア、そしてパリ Rétrospective Otar Iosseliani
〈特別上映〉オタール・イオセリアーニ映画祭〜ジョージア、そしてパリ
全21作品 デジタル・リマスター
※当サイトでは、フランス語圏関連作品のみを紹介。
 
 ときは18世紀。工房で次々と生産される美しい絵皿。職人の丁寧な絵付が、絵皿の価値を物語る。『月の寵児たち』(1984年)の主役は、この絵皿たちと1枚の裸婦画だ。オタール・イオセリアーニ監督が祖国ジョージアからフランスに活動拠点を移して製作された長編第1作は、パリを舞台に繰り広げられる群像劇。ここには、権力に媚びへつらう人物は出てこない。失敗を咎める雇い主に啖呵を切る給仕、警察が去ると「つかまるのはいつも善良な市民、クズは野放し」と言い放つ娼婦たち、刑務所で自分の権利を主張する受刑者。死ぬ人間もいる。彼らの死は、映画の中であっさりと片付けられる。かと思うと、バスで女性に席を譲る紳士がいる。その紳士と女性には実は本人たちさえ気づかない繋がりがある。路上でいたずらをする子供たち、この子たちが及ぼす影響は意外にも大きい……とてつもなくシュールに感じられるドラマも、終わる頃には自然に見えてくる。そして思う。現実世界の方がよほどシュールじゃないかと。21世紀となった今でも戦争は続き、奪われる必要のない命が奪われる。法の裁きが平和な社会をつくるわけでもない。割れた絵皿を懸命につなぎ合わせるのは誰か、裸婦画が最後に誰の手に渡るのか、そこにイオセリアーニ監督の無言のメッセージが感じられる。
 

『唯一、ゲオルギア』(1994年)は、4時間に渡るドキュメンタリー。哀愁のある音楽で始まり、聳え立つ山が映し出されると、ナレーションがジョージアの歴史を語り始める。ワインや音楽、さまざまな宗教を受け入れてきた風土などが、ジョージアの映画人たちが残してきた貴重な映像とともに私たちのもとへ届けられる。祖国を愛し、それでも祖国を旅立たなければならなかったのは、イオセリアーニ監督の他にどれだけいるのだろう。今、ウクライナが置かれている状況を思うと、この映画がつくられたときから世界はまったく変わっていないのではないかと感じてしまう。
 
日本初公開の短編、長編、懐かしい再上映……パリを舞台とした2作品、『月の寵児たち』と『皆さま、ごきげんよう』(2015年)を見比べるのも楽しそう。『月の寵児たち』でスクリーンデビューを果たしたマチュー・アマルリック。その初々しい姿を目に焼き付けてから、『皆さま、ごきげんよう』で30年後の彼を見つけると、年を重ねることのステキさにわくわくするかもしれない。(Mika Tanaka)

『月の寵児たち』 Les favoris de la lune初公開 『そして光ありき』Et la lumière fut初公開 『唯一、ゲオルギア』Seole, Géorgie初公開 『エウスカディ、1982年夏』Euscadi été 1982初公開 『トスカーナの小さな修道院』Un petit monastère en Toscane初公開 『ある映画作家の手紙。白黒映画のための七つの断片』Lettre d’un cinéaste. Sept pièces pour cinéma noir et blanc初公開 『蝶採り』La chasse aux papillons『群盗、第七章』Brigands: Chapitre Ⅶ『素敵な歌と舟はゆく』Adieu, plancher des vaches!『月曜日に乾杯!』Lundi matin『ここに幸あり』Jardins en automne『汽車はふたたび故郷へ』Chantrapas『皆さま、ごきげんよう』Chant d’hiver
 
Rétrospective Otar Iosseliani
 
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