Crédits : © 1985 Ciné-Tamaris / films A2 寝袋とテントを背負い、ヒッチハイクをしながら旅を続ける1人の女性がいる。彼女の名はモナ(サンドリーヌ・ボネール)。女性というより、少女と呼ぶ方がふさわしいかもしれない。あどけなさの残るその顔立ちに、満たされない思いと未熟な反骨心が垣間見える。彼女はなぜ冬の寒さの中、野宿をすることになったのだろうか?バカロレアを取得し、秘書として働いていた。だが「楽をして生きたい」から旅をするのだと言う。映画で語られる彼女の過去はそれだけ。本当の理由は何だったのだろう。その謎は、最期まで謎のままだった。誰ひとり、その謎に深く入り込もうとする人がいなかったからだ。彼女に手を差し伸べようとした人はいたけれど、出会いのすぐ先にいつでも終わりがあった。ワインの収穫祭で陽気に騒ぐ村人たちと、寒さと飢えで追い詰められたモナとの温度差に既視感を覚える。似たような状況は、今の社会に溢れかえっているではないかと。映画で初めから終わりまで暗い表情のモナが、一度だけ大笑いするシーンがある。豪華なソファで老婦人と二人でコニャックを飲み、歯に衣着せぬ会話を交わす。ほんのひとときでも、彼女が笑顔になってくれてよかった。(Mika Tanaka)監督・脚本 : アニエス・ヴァルダ出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリル、ステファン・フレイスヨランド・モロー1985年/フランス/105分Sans toit ni loi d’Agnès Varda avec Sandrine Bonnaire, Stéphane Freiss, Yolande Moreau; 1985, France, 105 min

Sans toit ni loi
