Crédits : ©2019 ‒ SCHUCH Productions ‒ Joparige Films ‒ 127 Wall 『ソウル・オブ・ワイン』1冊の詩集のような、あるいは、野に咲く花をそっと摘み取った手作りのブーケのような映画だ。マリー・アンジュ・ゴルバネフスキー監督が撮影に選んだのは、フランス・ブルゴーニュ地方。「神に愛された土地」と呼ばれる場所だ。カメラがとらえるのは、青い空と白い雲、果てしなく広がるぶどう畑。土の匂いを感じさせながら、詩のような、哲学のような言葉が漂う。生産者、樽職人、学者、ソムリエ……彼らの表情は慈愛に満ち、子供の成長を見守る大人のよう。「私たちは、祖先からの贈り物を子孫たちに伝えるためにワインをつくる」「ぶどうは家族。だから、手入れをするだけではなくて、愛や優しさが必要なんだ」。生産者たちの思いが穏やかなフランス語のリズムに乗って私たちの心を癒していく。そして、ワインにとってぶどうと同じぐらいに大切な「樽」についても語られる。樽の製造過程、樽職人と生産者のきさくな会話、大切でありながら注目されにくいシーンを切り取り、奥行きの深い味わいの映画をゴルバネフスキー監督は完成させた。醸造学者として知られる故ジャック・ピュイゼ氏が、「ワインの本質というのは見えないもの」と語ったとき、監督はこう答えたそうだ。「ちょうどよかった。私は見えない物を撮るのが好きなので」と。本作に登場するピュイゼ氏の表情も美しい。彼が語るフランス語の響きのように。(Mika Tanaka)監督:マリー・アンジュ・ゴルバネフスキー2019年/フランス/102分L’âme de vin documentaire de Marie-Ange Gorbanevsky; 2019, France, 102 min

『ソウル・オブ・ワイン』 L’âme de vin
