Crédits : ©AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020 こんな服を着たい。こんなおもちゃで遊びたい。小 さなこどもであっても、自分の好みがあって、自分の欲求がある。もちろん、7歳のサシャにも。妖精の羽をつけて可憐に踊るサシャの姿を見たら、何の疑問もなく女の子と思ってしまうが……フランスの北部の町。男の子の体で生まれてきたサ シャはあるとき「将来、女の子になりたい」と語る。母カリーヌは戸惑う。自分が女の子を欲しがったからなのか、サシャという男性にも女性 にも使える名前をつけたからなのか、と。悩んだ末、カリーヌはサシャの思いを受け入れ、世間と「闘う」ことを決意する。セバスチャン・リフシッツ監督は、”性別違和”の問題を抱える実在の家族を探し ていく中で、サシャたち家族と出会った。そして両親と会い、撮影の意図を語り、プライベートな空間に慎重な姿勢でカメラを向けた。家族と の信頼関係を大切にするため、スタッフの数を最小限におさえ、すべてのスタッフが家族との絆を深められるよう心がけた。やがて、スタッフはサシャを守る仲間という立ち位置 で映画をおさめた。サシャの兄弟のひとり、ヴァシリの存在が忘れ難 い。母「(サシャのために闘う)私たちのこと、どう思 う?」。ヴァシリ「やられっぱなしはだめだ。バカとは闘わな きゃ。黙っていたら何も変わらないよ」。声変わりを迎える前の少年が、母と対等に意見を交わしている。もっと甘えたかった気持ちもあるだ ろうに。サシャにかかりきりの母を理解し、妹を守ろうとする姿勢のなんと力強いこと。この映画を見終えたとき、私たちもきっと、この家族 の仲間になれるのではないかと感じる。サシャやヴァシリたちが大人になった頃、もっと自由に、もっと自分らしく生きられる社会をつくるこ とができますよう。(Mika Tanaka)監督:セバスチャン・リフシッツ2020 年/85分/ 原題:Petite fille配給・宣伝:サンリスフィルムPetite fille documentaire réalisé par Sébastien Lifshitz sur Sasha; 2020, France, 85 min

『リトル・ガール』 Petite fille
