Crédits : ©Les Films du Worso 『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』ああ、日本だけではないのか。フランスでも、そしてきっと世界のあらゆるところで同じような悲喜劇が繰り広げられているのだろう。そんな共感の思いが溢れる。舞台はフランスの南西部。緑豊かな場所に佇む邸宅で、アンドレア(カトリーヌ・トヌーヴ)は自分の70歳の誕生日パーティーの仕度に勤しんでいる。しっかりものの長男のヴァンサン(セドリック・カーン)は、妻と二人の子供を連れて訪れる。子供達は、アンドレアと同居する孫娘エマの指導を受けながら、パーティーで披露する芝居の練習に励む。次男のロマン(ヴァンサン・マケー ニュ)は情熱的な恋人、ロジータを連れての訪問。家族のドキュメンタリーを撮影しようとカメラを携えてきた。エマの恋人、ジュリアンがピアノを奏でている。もうすぐパーティーが始まろうとするその頃、3年前に娘のエマを残して家を出たクレール(エマニュエル・ ベルコ)が突然帰ってくる……「家族」というのはあたたかい安らぎの場でもなければ、どんな試練にも打ち勝てる強い絆でもないことを思い知らされる。心を病んだクレールのことを誰が責められよう。彼女を病気に追い込んだものは何だったのか?俳優たちの鬼気迫る演技は、たった1日のうちのたった数時間、1軒の大きな家の中で繰り広げられていく。フランスの古典演劇のようでありながら、「映画」という手法でなければ表現できないところが、この作品の魅力だ。ロマンがカメラを固定させながら小津安二郎監督について語る短いシーンがある。家族の在り方を撮り続けた小津監督へのオマージュもまた嬉しい。(Mika Tanaka)監督:セドリック・カーン出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベルコ、ヴァンサン・マケーシュ、セドリック・カーン2019年/101分Fête de famille de Cédric Kahn avec Catherine Deneuve, Emmanuelle Bercot, Vincent Macaigne; 2019, France, 101 min
『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』 Fête de famille
