Crédits : © 1946 Pathé Cinema - all rights reserved. 『天井桟敷の人々』4K修復版貧しいけれど夢があって決してあきらめない。劇場の天井桟敷にひしめくのは、そんなパワフルな庶民たちだ。彼らのために芸を捧げるパントマイム師のバチスト(ジャン=ルイ・バロー)の心はひたむきで、その舞台衣装のように真っ白だ。彼に微笑み、1輪の花を差し出した女性の名は、ガランス(アルレッティ)。二人が恋に落ちるのは一瞬だが、結ばれるまでの道のりは決して短くはない。「誰も悪くないのにうまくいかなくて堂々巡り。まるで回転木馬のようだわ」バチストを慕うナタリーはそう嘆く。ガランスを慕う男性たちは、それぞれのやり方で彼女を愛し、彼女の愛を求める。代筆の仕事をしながら殺人や盗みを働くアナーキストのラスネール、無言で真実を語るバチストの好敵手としてシェイクスピアを熱演するフレデリック……19世紀前半のパリのタンプル大通りを舞台に、実在の人物をモデルに紡がれた愛の物語。なんということのない男女の心の機微を描いたこの作品が映画史上の金字塔として75年近く経った今でも色褪せないのはなぜだろうか。美しい台詞の数々、テンポよい展開、品のあるカメラワーク、そのどれもが素晴らしい。しかしそれ以上に、ナチに占領されていたフランスで製作されたという事実が、この映画の輝きを永遠のものにしているのではないだろうか。劇中で語られる「夢」、「感動」、「自由」という言葉の重みが、21世紀のコロナ禍を生きる私たちの心に深く響いてくる。(Mika Tanaka)監督:マルセル・カルネ脚本:ジャック・プレヴェール出演:アルレッティ、ジャン=ルイ・バロー、ピエール・ブラッスール、マリア・カザレス、マルセル・エラン、ピエール・ルノワール1945年/190分Les enfants du paradis de Marcel Carné avec Arletty, scénario et dialogues de Jacques Prévert avec Jean-Louis Barrault, Maria Casarès, Pierre Brasseur, Marcel Herrand,Pierre Renoir; 1945, France, 190 min, restauré 4K

『天井桟敷の人々』4K修復版 Les enfants du paradis
投稿日 2020年10月23日
最後に更新されたのは 2021年7月12日
