Crédits : ©POLO-EDDY BRIÈRE. 『ファヒム パリが見た奇跡』あるラジオ番組。1人の女性が電話で首相に尋ねる。「フランスは本当に”人権”の国ですか?それとも、単なる”人権宣言”の国ですか?」。彼女の前には、滞在許可が下りずに困窮する難民親子がいる。その質問をはぐらかすことなく、まっすぐに答える首相の言葉に、フランスという国の良心が浮かび上がる。8歳で故郷バングラデシュを離れ、父親と2人でフランスへやってきたファヒム (アサド・アーメッド)。甘えたい盛りだろう。それでも、いっときの間、母親と離ればなれで暮らさなければならない。親族が反政府組織に属していたこと、加えてファヒムがチェスの大会で優勝したことがきっかけで、彼自身の身が危険にさらされたのだ。ある日、ファヒム は父と小さなチェスクラブを訪れ、国内でもトップクラスのコーチ、シルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)と出会う。同年代のクラブの仲間たちは彼に好意的、風変わりで気難しいシルヴァンとも徐々に打ち解け、ファヒムはそこに自分の居場所を見出す。師匠や友達の家を転々とし楽しく生活するファヒムだが、あるとき、父が路上生活をしていることを知る。父を守るため、いっときはチェスから遠ざろうとするファヒムだが……この映画は、実話に基づいてつくられた。ファヒム・モハンマドという少年は、2008年にフランスに入国し、長い時間をかけて滞在許可証を取得した。難民を描いた映画でありながら、観た後にさわやかな気持ちになれるのはなぜだろう?それはきっと、難民の惨めな姿ではなく、誇り高く愛情深い姿が描かれていたからなのだろう。そしてまた、彼らを助けようと懸命に動く人たちの姿も、さりげなく自然に描かれていたからなのだろう。 (Mika Tanaka)監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル出演:ジェラール・ドパルデュー、アサド・アーメッド、ミザヌル・ラハマン、イザベル・マンティ原題:Fahim/2019年/107分配給:東京テアトル/STAR CHANNEL MOVIESFahim de Pierre-François Martin-Laval avec Assad Ahmed, Gérard Depardieu, Isabelle Nanty; 2019, France, 107 mn

『ファヒム パリが見た奇跡』 Fahim
