“Grâce à dieu” —— 映画の原題となっているこの言葉を、聖職者が公の場で、もっともふさわしくないタイミングで発する。ほんの短いワンシーンに、一瞬で怒りが込み上げる。こんなときに神を語るのか、こんな現実が教会の日常なのか、こんなことがあっていいのか!と……映画の題材となったのは、カトリック教会の神父によるボーイスカウトの少年たちへの性的虐待事件。オゾン監督は、被害者として声を挙げた男性たちの話に耳を傾け、ドキュメンタリーのタッチのフィクションを撮り上げた。ちょうど事件の裁判が始まった翌月、本作はベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝き、本国フランスで多くの賛辞を浴びた。