Crédits : ©Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema 『今宵、212号室で』帰宅してすぐにシャワーを浴びる妻。脱ぎ捨てた妻の服を洗濯機まで運ぶ甲斐甲斐しい夫。何の気なしにポケットのスマホを取り出すと、妻宛に届いた浮気相手からのメッセージが目に飛び込む。「ただの火遊び、あなただって浮気ぐらいあるでしょ」と言い放つマリア(キアラ・マストロヤンニ)に対して、「俺は25年間、一度も浮気をしたことはない!」とリシャール(バンジャマン・ビオレ)が返す。「結婚する相手を間違えた」と、リシャールは怒り狂って部屋に閉じこもってしまう。マリアはすぐ向かいのホテルの部屋を取り、窓越しにリシャールの様子を伺うことに。すると、夢かうつつか、ホテルの部屋に次々とここにいるはずのない人々が現れ始める。若き日のリシャールと彼の元恋人、マリアの不貞を責める母親、マリアが過去に関わったかなりの数の男性たち、しまいにはシャルル・アズナヴール(のような歌手)まで現れて、マリアの奔放な生活に発破をかける……クラシック、シャンソン、懐かしくて甘いポップス、スクリーンいっぱいに音楽の香りが漂って、私たちはしばし映画の魔法に酔いしれる。そして一夜の短い物語が終わる頃、私たちは愛について少し学んで、少し大人になれる。かつて本当に夫婦だった2人がこの映画で夫婦を演じていると知って観ると、映画にはもうひとつのリアルがあって俳優たちは映画の中でもうひとつの人生を生きているのだとしみじみ感じる。ホテルの部屋番号が”212”という演出がおしゃれ。マリアの職業が伏線になっているので、映画の冒頭のマリアの台詞、しっかり覚えていてくださいね。(Mika Tanaka)脚本・監督:クリストフ・オノレ出演:キアラ・マストロヤンニ ヴァンサン・ラコスト カミーユ・コッタン バンジャマン・ビオレ キャロル・ブーケ 他2019年/87分/フランス・ルクセンブルク・ベルギー合作配給:ビターズ・エンドChambre 212 de Christian Honoré avec Chiara Mastroianni, Vincent Lacoste, Benjamin Biolay, Carole Bouquet, Camille Cottin; 2019, France, Belgique, Luxembourg, 87 min

『今宵、212号室で』 Chambre 212
