アンナ・カリーナ生誕80周年記念Crédits : © Les Films du Sillage – ARTE France – Ina 2017 『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』「アンナ・カリーナがいいわ」ココ・シャネルのひとことで、彼女の芸名は決まった。サンジェルマン・デ・プレで男物のレインコートに身を包んだエキゾチックな少女、それが後のアンナ・カリーナだ。ダイヤの原石を見出したモデルエージェンシーが、彼女をシャネルのもとへ連れていく。父は船乗り、母は19歳。両親に代わって4歳まで祖母に育てられた少女は、故郷のデンマークで自分の居場所をずっと探し続けていた。ロッセリーニやチャップリンの映画に心揺さぶられ、ルイ・アームストロングやカウント・ベイシーの音に憧れて、17歳になった彼女は自分の生い立ちから卒業するかのように、電車に乗ってコペンハーゲンを離れ、パリにたどり着く。モデルとして始まったアンナのキャリアだが、その豊かな感性と才能の先には女優としての道が用意されていた。ジャン=リュック・ゴダールに見初められヌーヴェルバーグのアイコンとなったアンナは、ルキノ・ヴィスコンティやジョージ・キューカーの映画にも出演し、国際的な女優として活躍の幅を広げていく。演技だけで表現しきれない思いをセルジュ・ゲンズブールの歌に込め、それでも満たされない思いを、脚本に託し、自ら映画の監督を手がけた。イングマール・ベルイマンの舞台に出演したこともある。これだけ華々しい人生でありながら、アンナの表情はいつもどこか寂しげだ。一方、この映画を観る人が多ければ多いほど、彼女の寂しさも癒されていくような気がしてならない。本作を撮ったのは彼女の最後のパートナー、デニス・ベリー監督。映画が日本で公開されるのを心待ちにしながら、アンナ・カリーナは2019年12月14日、パリでその生涯を終えた。2020年、この年限りという条件で本作は日本上映が許可された。作中にはアンナ・カリーナの過去の出演作品があり、著作権上の課題があるためだ。コロナ禍の最中でありながら予定通り公開が始まったことに、心から感謝したい。(Mika Tanaka)監督:デニス・ベリー2017年/55分配給:オンリー・ハーツAnna Karina, souviens-toi documentaire de Dennis Berry; 2017, France, 55min

『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』 Anna Karina, souviens-toi
