「ひどい旅だった」、「悪夢よ」。フランスへ帰る飛行機で、クロード(クリスチャン・クラヴィエ)とマリー(シャンタル・ロビー)が漏らす。コートジボワール、アルジェリア、中国、イスラエル。4人の愛娘の婿たちの国への訪問を終えたヴェルヌイユ夫妻は、故郷に帰るなり遭遇した労働者のストに安堵し、チーズとワインの暴飲暴食に身を任せる……ロワール地方の保守的なヴェルヌイユ夫妻と、バラエティ豊かな娘婿とその家族たちとの摩擦をコミカルに描いた前作『最高の花婿』(原題:Qu’est-ce qu’on a fait au bon Dieu?) が、同じキャストで私たちのもとへ帰ってきた。宗教も文化も違う彼らがぶつかり合う先にあるのは「笑い」だ。孫のことが可愛くてしょうがないし、義理の息子たちがフランスでの暮らしに失望しかけると、彼らの居場所を確保しようとヴェルヌイユ夫妻は奔走する。「国(フランス)が君たちを受け入れたというのに、君たちは文句ばかりだ!」と言い放ちながらも、クロードには”上から目線”が感じられない。「チーズとワインが最高」という縦の感覚ではなく、「俺はチーズとワインが好きなんだ」という横の感覚。まさに、フランスが誇る平等の精神(Égalité)ではなかろうか。世界中の人々に余裕がなくなり、差別や偏見がむき出しになっているこんなときだからこそ、多様性の国フランスから発信されるこの映画に希望を見出したい。(Mika Tanaka)
監督:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン
出演:クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビー
2018年/98分
Qu’est-ce qu’on a encore fait au Bon dieu? de Philippe de Chauveron avec Christian Clavier, Chantal Lauby, Ary Abittan, Medi Sadoun; 2018, France, 98 min