Crédits : © Avenue B Productions - 2L Productions 『スクールズ・アウト』「40歳にもなって代用教員?」フランスのとある名門中学校の教室で、人生の先輩を見下すようなまなざしを向ける少年少女。。生徒たちの目の前で身投げをした教師の代用教員として赴任したピエール(ロラン・ラフィット)は、最優秀クラスの生徒たちを前に戸惑いを隠せない。頭脳明晰だが感情表現に著しく乏しい生徒たちは、胸の内がまったくわからず、持て余すばかりだ。教師が窓から飛び降りたというのに、顔色ひとつ変わっていないのはなぜだろうか。疑心暗鬼に駆られる毎日。しかし何事もないかのように学校生活は続き、ピエールは教壇に立たなければならない。そしてある日、彼らの本心に気づいたピエールは……生徒たちのために、泣きながらなりふり構わずに行動するロラン・ラフィットの演技が強烈に心に残る。教育現場が抱える問題は、フランスも日本も同じなのだろう。この映画の校長も、子供たちの「こころ」には無頓着、数字で示される成績にばかり注力している。「僕は下町の公立学校の出身ですが、幸いなことに絵画やデッサンのクラスがありました。文化に触れ、感性を育む機会があったのです」と、セバスチャン・マルニエ監督は語る。セバスチャン・マルニエ 監督 Crédits : © Mika Tanaka 子供たちの感性や想像力の育成が欠落している現在の教育の在り方が危険をはらんでいることが、この映画から伝わってくる。それ以上に心をつかむのは、孤独な40代と10代がお互いを探り合いながらも歩み寄ろうとする姿だ。しかしそれは、レモンソーダのように爽やかな青春映画ではなく、とてつもなくリアルで深刻なラストへと続く、社会派のサイコ・サスペンスだった。 (Mika Tanaka)
監督・脚本:セバスチャン・マルニエ出演:ロラン・ラフィット、エマニュエル・ベルコ、グランジ、グレゴリー・モンテル2018年/103分/PG12L’Heure de la sortie de Sébastien Marnier avec Laurent Lafitte, Emmanuelle Bercot, Grégory Montel; 2018, France, 103mn, PG12

『スクールズ・アウト』 L’Heure de la sortie
