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『田園の守り人たち』 Les gardiennes
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Crédits : © 2017 - Les films du Worso - Rita Productions - KNM - Pathé Production - Orange Studio - France 3 Cinéma - Versus production - RTS Radio Télévision Suisse

『田園の守り人たち』
 
母であるということは、守るべきものがあるということ。守るべきものがあると、強くなり、そしてとても弱くなる。その変わり方もさまざまだ。オルタンスのような変わり方もあれば、フランシーヌのような変わり方もある。横暴な強さ、崇高な強さ。優しさへと続く弱さ、臆病なままの弱さ。いつだって、母となる者は、心の天秤を揺らしながら選択と決断を重ねる。守るべきもののために。
「(今の)あなたは怪物です」。尊敬していたはずの主人に裏切られたフランシーヌの言葉に、オルタンスはこう答える。「私は家族を守ります」と。
  舞台は第一次世界大戦下のフランス。男たちを戦場に奪われた女たちは、戦地から離れた農場で彼女たちの闘いを繰り広げる。自分たちから望んだわけではない悲しい闘いを。女優たちの素晴らしい演技に、思わず釘付けになってしまう。
  息子たち不在の農場を守るオルタンスを演じるのは、ナタリー・バイ。母・オルタンスに毅然と立ち向かう長女・ソランジュを演じるのは、ナタリー・バイの娘、ローラ・スメット。映画では初めての母娘共演となる。オルタンスの次男と恋に落ちるフランシーヌを演じるイリス・ブリーは、映画初出演。それまでの女優経験は皆無でありながら、大女優たちと共に堂々たる演技を披露する。髪をバッサリと切り、映画のラストシーンで見せる笑顔のなんと美しいこと。フランシーヌの二度目の奉公先のモネット夫人を演じるのは、グザヴィエ・ボーヴォワ監督の妻であり、本作の脚本と編集に携わったマリー=ジュリー・マイユ。身ごもったフランシーヌをさりげなくいたわる姿に、「母」という存在の本質を見ることができる。
  女優たちの名演をミレーの絵画のように紡ぎ、ミシェル・ルグランの甘美なメロディーを重ねたボーヴォワ監督は、戦場のシーンを描かずして、戦争の愚かさを描き切った。かつて『シェルブールの雨傘』(監督:ジャック・ドゥミ、音楽:ミシェル・ルグラン)がそうであったように、戦争は戦場の中だけで繰り広げられていたわけではないことを知る。(Mika Tanaka)
 
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:ナタリー・バイ、ローラ・スメット、イリス・ブリー
2017年/フランス・スイス/135分
 
Les gardiennes de Xavier Beauvois avec Nathalie Baye, Laura Smet, Iris Bry; 2017, France, Suisse, 135 mn
 
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