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La francophonie au Japon

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『アマンダと僕』 Amanda
©2018 NORD-OUEST FILMSARTE FRANCE CINÉMA

『アマンダと僕』
 
“Elvis has left the building.”(エルヴィスは建物を出た)。
エリヴィス・プレスリーのコンサートが終わって、観客がいつまでたっても帰らなかったときに流れたこのアナウンスは、「ショーは終わった」、「楽しいことはおしまい」という慣用句に使われている英語だ。部屋でこの題名の本をみつけたアマンダが、母・サンドリーヌに言葉の意味を尋ねるシーンがある。英語教師のサンドリーヌは子供にもわかるよう丁寧に解説し、2人はエルヴィスの曲をバックに楽しそうに踊る。部屋の窓から見えるパリの街には雑多な人が行き交い、木々の緑がまぶしい。初夏の木洩れ陽のパリを自転車で通り過ぎる青年は、サンドリーヌの弟・ダヴィッドだ。サンドリーヌはシングルマザー。ときおりダヴィッドの助けを借りながらアマンダを育てている。シングルファーザーのもとで育った姉弟ゆえか、2人の絆はとても強いようだ。アパートの鍵の管理や木の剪定を行う、いつも忙しい便利屋のダヴィッドだが、恋の天使が彼の扉をノックしたばかり。
  小さな幸せを大切に過ごすパリの人々に、突然悲劇が起きる。テロの襲撃によって姉のサンドリーヌは帰らぬ人となり、恋人のレナもまた心身ともに大きな傷を負う。心の支えを一挙になくしたダヴィッドだが、非情な現実は嘆く時間を与えてくれない。孤児となったアマンダの養育について考えなければならないからだ……思春期を終えたけれど自分探しの旅を続ける青年と、まだ思春期を迎える前だけれどしっかりした少女。どちらもかけがえのない人をなくし、心にはぽっかり穴があいている。ダヴィッドはアマンダを包み込むには少し頼りなく、アマンダはさびしさや悲しみを伝えきるにはまだ幼い。でも、季節は移ろい時計の針は進む。あるとき、ダヴィッドはアマンダと2人でウィンブルドン選手権のチケットを片手にイギリスを訪れる……光と風、人々の心の機微。かすかな動きをも逃さずに優しくすくいとり、「希望」という刺繍が施された織物のような映像を紡ぎ上げた、ミカエル・アース監督。目に涙をいっぱいに浮かべて”Elvis has left the building”と言うアマンダに、ダヴィッドが返す言葉に、どれだけの人が心救われるだろうか。(Mika Tanaka)
 
監督:ミカエル・アース
出演:ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトリエ、ステイシー・マーティン、オフェリア・コルブ、マリアンヌ・バスレー、ジョナタン・コーエン、グレタ・スカッキ
2018年/107分/PG12
 
Amanda de Mikhael Hers avec Vincent Lacoste, Maud Ameline; 2018, France, 107 mn, PG12
 
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