Crédits : ©WILLOW FILMS - UGC IMAGES - ORANGE STUDIO - FRANCE 2 CINEMA 『パリの家族たち』おむつを替えながら、スマホで話をする大統領。きりっとした服装、隙のない言葉、それとは裏腹に表情はどこか不安げだ。母親となった自分に厳しい視線を向ける国民への不安か、それとも完璧な母親になれないことへの不安か。そんな大領領が率いる国フランスで、さまざまな悩みを抱える人々が暮らす。彼らや彼女たちそれぞれの生き様が「母の日」を軸に描かれる。奔放な母親のもとで、三者三様の悩みを抱えて成長した三姉妹。長女は子供ができず養子を迎える決断をする小児科医、次女はシングルマザーのジャーナリスト、三女は独身を謳歌する大学教授だ。なぜ3人も子供を産んだのか、一人っ子ではいけなかったのかと、三女が母に尋ねる。認知症となった母は「妊娠しているときは楽しいのよ」と答えながら、娘たちのために費やした時間への恨みつらみを言い続ける。街角では別のドラマが繰り広げられる。亡き母への思いを今も大切にする花屋の主人、恋人に妊娠を告げられずにいる店員。舞台女優としてのキャリアをあきらめない母の健康を気遣う息子……重い空気が漂うかと思えば、母子で水たまりに足を入れて泥だらけになって笑ったり、コウノトリの着ぐるみを着て恋人に妊娠を伝えたりと、お茶目なシーンもあったりする。「サボテン」のプレゼントのシーンもクスッと笑える。母親群像劇の中でも本当に小さい役だけれど、フランスで娼婦として暮らす中国の女性の存在が忘れられない。わずかな時間を使って子供とスカイプするときのあの慈愛に満ちた表情に、「聖母」という言葉を重ねたくなる。監督が伝えたいメッセージの真髄が、ここに凝縮されているような気がする。(Mika Tanaka)監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール出演:オドレイ・フルーロ、クロチルド・クロ、オリヴィア・コート、パスカル・アルビロ、カルメン・マウラ、ニコール・ガルシア2018年/103分La fête des mères de Marie-Castille Mention-Schaar avec Audrey Fleurot, Clotilde Courau, Olivia Côte, Pascale Arbillot, Jeanne Rosa;2018, France, 103 mn

『パリの家族たち』La fête des mères
