Crédits : @ 2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma 『パパは奮闘中!』自分のやり方は間違っていない。だから、妻も2人の子供も幸せに過ごしている。そのはずだった……オンライン販売の倉庫で働くオリヴィエの人生は、順風満帆のように見えた。同僚にも気配りができ、正義感も強い。そんな彼の生活を一変する事件が起きる。妻が子供たちを残して失踪してしまったのだ。仕事は残業続き、といってもオリヴィエにはベビーシッターを雇う金銭的余裕はない。子供たちに何を着せるのか、どんな食事を用意すればいいのかわからず、かかりつけの医者に連れていく時間もとらなければならず途方にくれるオリヴィエ。ほうっておいたらいつまでたっても子供たちは寝ようとしないし、いつも通り職場に向かいながらの慣れない子育ては文字通り試練のくり返しだ。映画ファン歴、シネフィル歴が長い人なら『クレイマー、クレイマー』のフランス版?と思うかもしれない。確かに、去った妻の孤独には共通する何かがあるけれど、残された家族たちの行動は『クレイマー、クレイマー』とは少し違った魅力を放っている。ギヨーム・セネズ監督自身の体験がもとになっていることということを知ると、台詞のひとつひとつがどれだけの重みを持っているかに気づく。深刻なテーマをさらりと流していくところがセネズ監督流。食卓の小道具「シリアル」を通して、家族の関係性の変化を表現するところにセンスのよさを感じる。子供たちと向き合えなかったオリヴィエが、自分の弱さを子供たちにさらけ出し、心を寄せ合うまでの過程は、私たちが登場人物と一緒に小さな船旅をしているような感覚。ラストシーンのその先に、素敵な港が見えますように。(Mika Tanaka)監督:ギョーム・セネズ出演:ロマン・デュリス、レティシア・ドッシュ2018年/ベルギー・フランス/98分Nos batailles de Guillaume Canet avec Romain Duris, Laetitia Dosch; 2018, Belgique, France, 98 mn

『パパは奮闘中!』 Nos batailles
