『若い女』「八方ふさがり」とは、こんな状況を言うのだろう。写真家の恋人のミューズとして、10年間、何不自由ない生活を送ってきたポーラ(レティシア・ドッシュ)。そんな彼女に突然の転機が訪れる。恋人のジョアキムから突然別れを告げられ、路頭をさまようはめに。大学を中退し、ジョアキムの被写体以外にこれといったキャリアもないまま31歳となった彼女に、パリの街は冷たい。音信不通の母と久々に連絡を取ろうとするが、その母もポーラをかたくなに拒絶する。やっとの思いでみつけた仕事は、住み込みのベビーシッターとランジェリーショップの店員という、ダブルワーク。ポーラがあらたに出会う女性たちは誰もたくましく生きている。シングルマザーとその娘、博士論文を執筆中の学生、元同級生と名乗るLGBTの女性…… みんな、自分の足で立ってパリの地を踏みしめている。孤独だのさみしいだのとつぶやくひまもなく、前へ前へと進んでいる。映画の冒頭では錯乱状態で”空っぽ”に 見えるポーラが、少しずつ自分を取り戻し美しく変貌していくさまを見ているとわくわくしてくる。映画の最後にうつる、自立したパリジェンヌの目の輝きは宝 石のようにきらきらしている。レオノール・セライユ監督をはじめ、撮影、サウンド、編集、作曲等、製作スタッフは全員女性。”Jeune femme(若い女)”というタイトルのとおりだから、この映画はこんなにも思い切りがよくてすかっとするのかもしれない。パワフルな女性たちの中でひときわ映えるのが、高学歴の警備員・ウスマン(スレイマン・セイ・ンディアイ)。娘をいとおしむシングル・ファーザーぶりがとても素敵。(Mika Tanaka)監督:レオノール・セライユ出演:レティシア・ドッシュ、グレゴワール・モンサンジョン、スレイマン・セイ・ンディアイ、ナタリー・リシャール2017年/97分Jeune femme de Léonor Serraille avec Laetitia Dosch, Grégoire Monsaingeon, Souleymane Seye Ndiaye, Nathalie Richard; 2017, France, 97 mn
『若い女』Jeune femme