『BPM ビート・パー・ミニット』”AIDS Coalition to Unleash Power”(力を解き放つためのエイズ連合)、略して “ACT UP”。「アクトアップ」には、「派手にやれ」の意味もある。血にみせかけた真っ赤な液体を製薬会社に投げつけたり、高校に突然押し掛けてコンドームの必要性を訴えたりと、ACT UPの活動は文字通り派手だ。映画は、ACT UPのミーティングのシーンから始まる。世間を騒がせて目立とうとか、社会に楯突こうとか、集まった彼らの思いは、そんな青臭い気持ちをぽーんと飛び越えたところにあって、いつの間にか、見ている自分もミーティングに参加しているような気持ちになる。生きていたい。生きていてほしい……性別も肌の色も年齢も関係なく、LGBTであっても薬物中毒者であっても、ACT UPのメンバーは「生きぬいて」というメッセージを送り続ける。1990年代前半、ACT UP-Parisの活動に参加していたロパン・カンピヨ監督が、当時の空気をそのまま映像に閉じ込め、フィクションとして再構築した。スマホもSNSもなかったこの時代、彼らは実際にミーティングで顔を合わせ、お互いの意見を出し合い、いいねをクリックする代わりに指をパチンと鳴らして賛同していた。抗議文はEメールではなく、FAX。ほんのりとレトロな感触が漂う。今でこそ、不治の病ではなくなったエイズだが、この当時はまだ画期的な治療法がみつけられていなかったことが思い出される。死が忍び寄るの待ち続ける青年。傍らで寄り添うパートナーや同士。彼らにとって、活動は命を救う行為にほかならない。だから私は、この映画を社会派映画というより青春映画と呼びたい。自由と平等のために戦った革命家たちの末裔の青春—— この映画にもフランスの魂がぎっしりとつまっている。(Mika Tanaka)監督:ロバン・カンピヨ出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤード、アルノー・バロワ、アデル・エネル、アントワン・ライナルツ2017年/143分120 battements par minute de Robin Campillo avec Nahuel Pérez Biscayart, Arnaud Valois, Adèle Haenel, Antoine Reinartz; 2017, France, 143 mn
『BPM ビート・パー・ミニット』120 battements par minute