フラン•パルレ Franc-Parler
La francophonie au Japon

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ベルナール・ロワゾー、3つ星レストラン・オーナーシェフ
投稿日 2001年9月1日
最後に更新されたのは 2017年6月7日
ベルナール・ロワゾー:垂涎の味
 
ベルナール・ロワゾーの出身地はオーベルニュだが住んでいるのはブルゴーニュのソーリュー。かつて駅馬車の宿として使われていた4つ星ホテル、ラ・コート・ドール(ルレ・エ・シャトー・チェーン会員)内のレストラン(ミシュランガイド3つ星)のトップを勤める。味覚中心の料理の守護者を自認。
 
フラン・パルレ:水をつなぎにする流派の第一人者だと言うことですが、何のことだか説明していただけますか。
ベルナール・ロワゾー:フランス料理はずいぶん進化したと思います。でも過去を裏切ってはなりません。昔のフランス料理はあまりにもリッチで重過ぎました。油が多過ぎましたし砂糖も多過ぎた、クリームもバターも多過ぎました。私は過去を裏切ることなしに、より軽い方向に料理を変革したんです。バターは使いますよ。過熱の時に。鶏の皮をぱりっとさせたり、魚に焼き色をつけたりするのに欠かせませんからね。でもその後は全部捨ててしまいます。その後で脂肪の除去をします。水の料理とはつまり自然のジュ(汁)のことを言います。舌平目の骨をとるとしますね。これをローストして、野菜を加え、そこに何を入れるかといえば水です。水を少し入れて煮詰めると、舌平目の骨の味が汁に移ります。水は無味無臭ですから鍋の中に入れた材料そのものの味になります。だから子牛を入れれば子牛の肉汁の味になるし、成牛ならば成牛の汁の味になります。これが私の料理哲学のすべてだったと言っていいでしょう。そこから生まれたのが、味はしっかり付いているのに脂肪の極めて少ない料理です。ベルナール・ロワゾーのスタイルというのはこれを言います。過去を裏切ることはしません。ヌーヴェル・キュイジーヌはやりませんし、興味もありません。ヒメジのキウイ添えとかオマールのチョコレート風味などは私の趣味ではありません。私が作るのは本物のフランス料理です。でも軽くなっている。つまり、私は材料を厳選し、本当にいいものだけを使っているということなんです。いまは料理人がスターなのではなく、素材がスターなんです。そこから出発し、それを演出しながら味付けをします。味はどれだけ利かせても3種類までです。それ以上になると、全部の味を舌で探し当てるのは容易ではありません。
 
フラン・パルレ:ブルゴーニュではどんな食材に力を入れていますか。
ベルナール・ロワゾー:蛙とホソスズキとブレスの鶏と農場の鳩です。それからベジタリアンのメニューもあります。うちでできた野菜を総動員して作ります。モルヴァンに生産者が数人、うちの野菜を作らせています。それから足の赤いザリガニなど、この地方で見つかるものは何でも使います。素晴らしいチーズもあります。エポワスなど。黒すぐりのシャーベットや木苺など。ブルゴーニュにはこうしたものが豊富にあります。卵もありますね。私は卵をよく使います。ここの名物料理はポーチドエッグの赤ワインソースですが、私は色々変化をつけています。たとえば茸のシチューに卵をポシェしてナイフで切り目を入れ、黄身が茸とうまく混じるようにします。
 
フラン・パルレ:生産者との関係はどうですか。
ベルナール・ロワゾ−:とても真剣な付き合い、長く密接な付き合いです。彼らなしには何も出来ませんからね。生産者あっての私なんです。この頃は世の中がおかしくなって遺伝子加工食品や狂牛病や口蹄疫や何やかやで、いい料理を作るどころではありません。私は農家の人と緊密な関係を保っています。彼らなしにはいい料理など作れはしません。私はいつも彼らに頼んでいるんです。規則にのっとって育てて下さい。いいものを食べさせて下さいとね。でなければ後ろに控えている私がいい料理を作れなくなります。第二に店の設えについても同じことが言えます。古い石や古い材木がいりますから。職人たちと仲良くせねばなりません。この頃では手仕事をする人がいませんからね。
 
フラン・パルレ:ワインのほうはどうですか。
ベルナール・ロワゾー:ここでは問題ありません。95%はブルゴーニュです。ベルナール・ロワゾーの店に来る人は皆ブルゴーニュを飲みます。世界一の白ワインはブルゴーニュのものです。モントラシェ、サシャーニュなどは世界一です。でも赤ワインは、ブルゴーニュはもちろんとても美味しいのですが、ボルドーもありますからね。コート・デュ・ローヌもとても美味しいし、ラングドック・ルシヨンもとても美味です。だから赤については好みの問題ですね。でもブルゴーニュを優先するのはもちろんです。ボルドーを欲しい人があれば、ボルドーの名酒もあります。フランスのあらゆる地方のワインが揃っています。
 
フラン・パルレ:ラ・コート・ドールの内装は全部地元の職人がやったのですね。
ベルナール・ロワゾー:全部古いものですが、技術は新しいものを使っています。料理と同じ原理です。ベルナール・ロワゾーが常に心掛けているのは過去を使って現在を作ることです。だから私は具象派であって抽象派ではありません。私の店は18世紀の建物で、天井はフランス式、床は古い石、壁は塗り壁で布類はとてもシンプルなものです。でも新しい技術を取り入れています。たとえば石やテラコッタタイルの裏から暖める床暖房や、目に見えない空調設備です。ハンマーム(中東の共同大衆浴場)やサウナ、ジャグジー、バルネオ、フィットネス、屋外プール、屋内プールがあります。何でもありますよ。どこにもひけをとりません。
 
フラン・パルレ:それにいろいろな種類の商品がありますね。
ベルナール・ロワゾー:私はパリの証券取引所の2部に上場しています。世界中を探しても3つ星レストランのシェフで株式上場しているのは私くらいのものです。パリにレストランが3軒あります。タント・ルイーズ、タント・マルグリット、タント・ジャンヌです。この3軒は弟子が経営しています。私はぜんぜん行きません。私が行くのはソーリューだけです。他は行きません。ベルナール・ロワゾーがいるのはソーリューですが、ソーリューで生活しているわけではありません。だからビジネスが必要になってくるんです。食品関係の契約がどっさりあります。どこのスーパーでも真空パックの料理を売っていますし、ムードを演出するアロマつきの蝋燭も売っています。ウイキョウの香り、パセリの香り、胡椒の香り、スパイス入りパンの香りなどです。これは香水店で扱っています。シャンゼリゼにもあるし、フランスのどこにでもあります。ここで稼ぐお金を注ぎ込んで、ソーリューを世界有数の美しい店にするのです。成功するだけの資金を自分で作っていると言うことですね。
 
フラン・パルレ:見て歩くところはありますか。
ベルナール・ロワゾー:北ブルゴーニュは素晴らしい土地ですよ。徒歩でハイキングするのに最適です。見事な森林の下生え、沼や湖、ヴェズレーなどの城やフォントネー修道院の見学など。類い稀な美しさです。とてもシンプルで質素な感じ、昔そのままです。妖精が魔法の杖を一振りしたのではないかと思うほど、60年代から全然変わっていません。世の中は至るところ公団アパート、鉄筋コンクリートの洪水ですから、ここへ来た時は皆とても幸せそうです。パリから2時間、リヨンから2時間、まさに魔法のような場所です。
 
2001年9月
インタヴュ−:エリック・プリュウ
翻訳:大沢信子
写真提供:キャンペンハウス
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