戯曲『ヴェール』ジョルジュ・ローデンバック作村松定史訳Le Voile de Georges Rodenbach森開社広い屋敷で暮らす青年ジャンのもとに、ベギン会が1人の修道女を派遣した。年老いた 叔母の身の回りの世話をするためだ。ギュデュルと名乗るその尼僧はもの静かで、にこやかで、細やかな気遣いでジャンの心を少しずつ潤していく。さりげない食卓での会話は、夫婦のそれとは違った親密さを帯び始める。ジャンが抱く熱い思いは恋なのか、信仰なのか……ベルギー生まれのこの作家の感性は、「フランドル地方のレースや銀細工に比肩する」とフランスの詩人、ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé)に讃えられ、日本の小説家、永井荷風らに愛された。この戯曲『ヴェール』(Le Voile) は、コメディ・フランセーズの舞台にベギン会修道女を登場させた、はじめての作品となった。ストイックな展開の中、繊細なレースの編み目からこぼれるように、若さと情熱と失望が見え隠れするさまがもどかしくも美しい。(Mika Tanaka)
戯曲『ヴェール』 “ Le Voile” ジョルジュ・ローデンバック
投稿日 2018年2月13日
最後に更新されたのは 2023年5月23日