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『ジャコメッティ 最後の肖像』Final portrait
© Final Portrait Commissioning Limited 2016

 
『ジャコメッティ 最後の肖像』
 
舞台は1964年のパリ。ジャコメッティが、友人のアメリカ人作家、ジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)にモデルを依頼するところから映画は始まる。2日程で完成するという言葉を信じ、ロードは帰国を延期してジャコメッティのアトリエでポーズを取る。本能のおもむくままに生き、信念を決して曲げない芸術家は、「肖像画とは決して完成しないもの」という不吉な言葉をロードに投げかける。3日、4日…… まるで迷宮に迷い込んだかのように、終わりの見えない作業。帰りの便を何度も変え、ロードは着替えもせずに同じ服装でカンバスの前に座る。そんなロードの不安と疲れを癒すのが、ジャコメッティの弟・ディエゴ(トニー・シャループ)の存在だ。決して満足しない、まるで幻を追い求めるかのような兄を、さらりと交わして受け止めるさまは、まるで仏さまのよう。仏だけではない。この映画にはミューズも出演する。ジャコメッティお気に入りのモデル&娼婦・カロリーヌ(クレマンス・ポエジー)が登場したとたん、映像のトーンがガラリと変わり、色彩が豊かに。「彼の晩年に焦点をあてることで、ジャコメッティという人間やその人生について、伝記映画と同じくらいか、それ以上のことを探求したい」とスタンリー・トゥッチ監督は映画への思いを語った。わずか18日という制作期間を切り取り、ジャコメッティの本質をずばり表現できてしまうところに、映画の魅力とトゥッチ監督の力量を感じる。重々しい題名とはうらはらに音楽は軽やか、コメディ映画なので肩の力を抜いてご覧あれ。さりげない終わり方は、さらに軽やか。(Mika Tanaka)
 
脚本・監督:スタンリー・トゥッチ
出演:ジェフリー・ラッシュ、アーミー・ハマー、トニー・シャルーブ、シルヴィー・テステュー、クレマンス・ポエジー、タカツナ・ムカイ
2017年/イギリス/英語・フランス語・イタリア語/90分
 
Final portrait de Stanley Tucci avec Geoffrey Rush, Armie Hammer, Tony Shalhoub, Sylvie Testud, Clémence Poésy; 2017, Grande-Bretagne, anglais, français, italien, 90 mn
 
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