『若き詩人』Un jeune poète世界の人々を魅了させるような詩人になりたいと夢追う青年レミは、創作活動のため小さな港町に滞在する。レミは日常の情景からなにかを感じ得ようと、街のなかや海岸を巡り歩き、森の中で葉音を鳴らし、海辺の墓地で鳥の声に耳をすませる。時には友人と一緒に海に潜ったり、一人で酒を飲んで酔いつぶれたり、女性に想いを寄せてみたりする。レミは自分なりに様々なことを試してみるものの、肝心の”世界の人々を魅了するような詩"が作れないでいた。詩に合う言葉をつぶやいては小さなノートに書き出し、海辺の墓地のベンチに通いながらレミは詩を創作していく。短編映画で評価を受けたダミアン・マニヴェル監督の初の長編映画。短編映画『犬を連れた女』で主演したレミ・タファネルを再び起用している。シナリオなく10日間で撮影が行われたとは思えないほど繊細で膨らみのある作品となっている。(スズキエイコ)監督:ダミアン・マニヴェル出演:レミ・タファネル、エンゾ・ヴァッサーロ、レオノール・フェルナンデス2015年/71分『犬を連れた女』La dame au chien ※併映暑い夏の日、プールの帰りに少年は公園にいた迷い犬を飼い主の家まで送り届ける。飼い主は大柄で中年の黒人女性で酒に酔っている様子だった。家の中に招き入れられた少年は勧められるままラム酒を口にし、女性と会話を始めるが……。この映画には女性と少年と一匹の犬しか出てこない。音楽が流れるわけでもなく、会話もさほど多くはない。しかし、物憂げな女性と無垢な少年のあいだを流れる空気感は見ている側の想像力を掻き立てる。見終えたあとに、自分の感じたそこはかとない緊張感を誰かと共有したくなる作品だ。2011年にフランスの若手監督に贈られる映画賞「ジャン・ヴィゴ賞」の短編部門を受賞した作品。主演は『若き詩人』のレミ・タファネル。女性を演じるのは『キングス&クイーン』のエルザ・ウォリアストン。(スズキエイコ)監督:ダミアン・マニヴェル出演:エルザ・ウォリアストン、レミ・タファネル2010年/16分
『若き詩人』Un jeune poète