『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ〜』 Les Héritiersパリ郊外にある、レオン・ブルム高校。ここには、出身・宗教などが違う、さまざまな生徒たちが集まっている。この学校で、「落ちこぼれ」と呼ばれている、荒れたクラスに担任としてやってきたのが、厳格な歴史教師・アンヌ・ゲゲン先生(アリアンヌ・アスカリッド)だ。情熱的なアンヌ先生は、クラスの生徒たちに「全国歴史コンクール」への参加をすすめるが、ほとんどの生徒が興味を示さない。アンヌ先生が提示した「ナチス」というテーマは、多くの生徒にとって難しく、身近ではない世界の話だったのだ。ある日、アンヌ先生は、アウシュヴィッツ強制収容所の生存者であるレオン・ジゲル氏を授業に招く。生き証人の言葉を受け止めた生徒たちは、ナチスの問題を自分たちの歴史の一部として考え、コンクールに真剣に取り組み始める。レオン・ブルム高校は実在の学校。フランス映画祭2016で来日したマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督は、トークショーでこう語る。「今では、(安全のため)扉や門を閉める学校が多い中、レオン・ブルム高校は40近くもの扉、すべてを開放しています」と。時代を逆行するかのように聞こえる、この寛大さに、フランスの誇りと勇気を感じる。この映画の誕生は、本作にも出演しているアハメッド・ドゥラメ(当時18歳)が監督に送ったメールから始まる。アハメッド自身が、このクラスの卒業生で、自分自身の体験を監督に語ったことがきっかけだった。そして、映画の中盤で登場する、レオン・ジゲル氏は実名、収容所の体験談も脚色を加えない事実だ。プロの俳優と未経験者が入り交じった教室で、ジゲル氏の「真実」が、彼らの演技に与えた影響はどれだけ大きかったことだろう。アンヌ先生を演じたアリアンヌ・アスカリッドにも拍手を。「あなたたちを信じているのは、私だけ?」この台詞が忘れられない。(Mika Tanaka)監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール出演:アリアンヌ・アスカリッド、アハメッド・ドゥラメ、ノエミ・メルラ、ジュヌヴィエーヴ・ムニシュ2014年/105分
『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ〜』 Les Héritiers