『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』Relève: histoire d’une créationバレエの殿堂として君臨する、パリのオペラ座。この、オペラ座の新しい芸術監督として抜擢されたのは、映画『ブラック・スワン』の振り付けを手がけたバンジャマン・ミルピエだった。バレエ界の異端児と呼ばれ、史上最年少の芸術監督に抜擢されたミルピエが、オペラ座での新作『クリア、ラウド、ブライト、フォワード』を完成させるまでの40日間を追ったドキュメンタリーがこの作品だ。「僕らはもっと上を目指せるはずだ」「国籍も肌の色も違うダンサーを起用したい。差別はバカげてる」白人至上主義の傾向が強いバレエ界に、ミルピエは真っ向から立ち向かう。「社会の手本になれないバレエは意味がない」という彼の言葉に、オペラ座の、パリの未来が垣間見える。若いエネルギーが結集するオペラ座のバックステージでは、iPhoneを活用できないと、ぼやく声も。歴史と伝統があるということは、設備が最新技術に対応しづらいというデメリットもある。そんなときの、オペラ座総裁、ステファン・リスネ氏の言葉にパリの誇りを感じる。「大型客船は動かすのは楽じゃないが、必ず動くから安心してくれ」「寛容の精神を忘れたくない」と自戒し、ダンサーひとりひとりの個性を大切にするミルピエの生き方が、「芸術とは何か」という問いに対する答えそのものだと思う。 (Mika Tanaka)監督:ティエリー・デメジエール、アルバン・トゥルレー出演:バンジャマン・ミルピエ出演ダンサー:レオノール・ボラック、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、アクセル・イーボ、エリオノール・ゲリノー2015年/114分
『ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜』Relève: histoire d’une création